ホーム > 時事・経済要点 >

バランスシート不況とは何か?みんなが一斉に借金返済に走るとどうなるか!?

2014年04月05日 ネズミ1号:略称「T」
, タグ: ,


しばらく出張が続いたため、久々の更新ですが、先日リチャード・クー氏が提唱するバランスシート不況という考え方について、同氏から直接お話を聞く機会がありました。今までの経済学の教科書には書かれていない概念なので、なかなかAgreeという論調がとれなかったが最近はみんな理解してきているようだということでしたが、日本がバブル崩壊以降陥った状況が分かる考え方だと思います。簡単にいうと、バブルとは借金をしてまで、資産を購入、または投機に走った現象です。バブルがはじけると、資産価格は限りなくゼロちかくまで下がりますが、借金はバブル当時のまま残るのです。そうなるとどうなるか?金利がゼロでも借り手は現れず、みんなが借金返済に走ることになったのだそうです。


 

 

みんなが一斉に借金返済に回るという現象は経済学の教科書では想定されていない。

下のグラフは、野村の資料ですが、バブル崩壊後、日本では、金利がゼロ金利となりました。経済学の教科書では、金利がゼロであるならば、設備投資などをしてもうけに走るというのが合理的だという論理となっています。お金には現在価値、将来価値というのがありますが、金利を払わなくていいのなら人々は投資に走るという論理ですね。しかし、この教科書どおりの現象が実は起らなかったのです。

日本では、ゼロ金利では足りず量的緩和を90年代中盤から行ってきています。下のグラフを見ると分かりますが、マネタリーベース(日本銀行券発行高)が増えてもマネーサプライ(市中に出回るお金)は実はそんなに増えていません。一方で銀行融資(企業や人々が借金する額)はバブル崩壊前にくらべて41%も下がっているそうです。

20140406balancesheetdepression.png

バブル崩壊後みんなが一斉に借金返済だけをしてきた。投資先がゼロという異常な状況で残る借り手は、政府のみ。

このことは何を意味しているのかというと、ゼロ金利下で、みんなが借金返済へ走ったということなのだそうです。

20140406balancesheetdepression2.png

上のグラフを見れば一目瞭然ですが、バブル崩壊後マネタリーベースが十数倍にも拡大したにも関わらず、借入金(銀行からの借金)はずーとマイナスだったんです。よくニュースなどでは、貸しはがしなどと言われていましたが、実態はお金を運用するにも借り手がおらず、国債で運用するしかなかったというのが実態のようです。一番上のマネーサプライ(市中に実際に出回った分のお金)は、政府が発行した赤字国債によるものだといえそうですね。

つまり企業、個人すべてが借金返済に走ることで、融資する先が限りなく無くなってしまったということが良くわかりますね。GDPの10%近くが借金返済(バブル崩壊後の資産下落分)にブラックホールのように吸い込まれてしまっているというイメージですね。成長率2%目標だとかいいますが、誰も借金せず、投資がなさらないのならば、経済は、マイナス成長に陥ることは明白です。

企業収益は上がるが、投資には回らない>給与は増えない>消費が落ち込む>モノが売れない>デフレというサイクルになるイメージが付きますが、これがリチャード・クー氏がいうバランスシート不況なのだそうです。

最後の借り手政府が財政出動することで、経済萎縮を回避できる

バランスシート不況の回避方法としては、政府が大きな財政出動をし、借金をするこなのだそうです。民間部門が一斉に借金返済に走る中、唯一政府が財政出動できるかがカギなのだそうです。実際日本のGDPはバブル崩壊後そんなに落ち込まなかったそうですが、これは小渕内閣以降の公共投資が大きかったようです。ただ、民主国家では、財政規律の問題等で実はこうした事が非常にやりにくいという側面もあるようです。マスコミなどはこんなに国が借金をしてツケをどうするのだ!という論調が書かれ、世論も怪しからんとなりますが、実は政府が借金して経済を刺激し、成長率を上げ、民間部門がお金をませるようにする方が、バブル崩壊のツケを生産する一番の近道なのだということです。

みんなが借金しない時だからこそ政府がするべき。独裁国家中国がこれから一人勝ちする!?

独裁国家では、政府が最後の借り手としてきちんと仕切ることができた!?

china-LewisconversionPoint.png一方で、中国は共産党一党独裁の仕切りの中で、バブル崩壊危機の局面で60兆もの政府投資が行われました。シャドウバンキングだの、中国バブルが崩壊するといったような先進国アナリストではそうした期待する声がありますが、何度も裏切られてきたのは、中国の官僚がバランスシート不況という概念を理解していたからだということが言えそうです。現在中国は、労働集約型なモデルからルイス転換点を迎え、内需主導の経済構造へと変わろうとしているようです。その中で、つぶすところはつぶす、また中所得者が増えることで陥る罠を回避するためにこれから15年から20年にかけて構造変革を行えるかという点が焦点のようです。中所得者の罠とは世界銀行が2006年の出した概念で、安価な労働集約型の輸出型経済構造から、所得が増えることで、(ルイス転換点を迎える)そのモデルが維持できなくなるので、モデル変換を行えるかどうかという事。モデル変革ができないと、長期停滞に陥るという事です。

1929年世界恐慌のニューディール政策学ぶところはありそう

toruman.png20世紀初頭に起きた世界恐慌を経験した資産家は、死ぬまで「もう借金はこりごりだ!」といっていたそうです。バブル崩壊後のこうした心理的な後遺症は、このようにそれを経験した世代が死ぬまで尾を引く代物なのだそうです。私自身に置き換えてもその実感は、共感できるものだと思います。そうした中大規模な公共事業を行った米国トルーマン大統領によるニューディール政策については、ある意味、的(まと)を得た教訓だといえるでしょう。クルーグマンやバーナンキ元FRB議長もも実はこうした過去の教訓をしっかり生かせていないようです。民主国家では難しいのかもしれませんが、非伝統的な金融政策ではなく、実は共産主義的な大きな政府による財政出動が解だった?という皮肉な結論なのかもしれません。実はこの非伝統的な金融緩和を行ってしまった米国やイギリスは、これから経済が挽回する局面で、ハイパーインフレに陥るリスクと隣り合わせになりながらの金融政策運営を強いられることになるそうです。米国出口戦略が早期にうちだされたのも、バーナンキがこのことに気付き「やぱい!」と思ったからなのだそうです。リチャード・クー氏がFRBのお偉いがたさんにこの点について質問したところ、「that matter is not my(our) problem」という答えが彼女から帰ってきたそうです。その彼女ってイエレン氏?などと勘ぐってしまいましたが、これからどうなるか経済ニュースなどをこうした視点でみると面白くなりそうです。次回は、「量的緩和やってしまった日・米・英はこれからハイパーインフレの恐怖と戦わなければならい」という件について紹介させていただきます。



2014年04月05日 ネズミ1号:略称「T」
, タグ: ,


前ページに戻る


,  タグ: ,


おすすめ記事

 

『バランスシート不況』の関連記事

  • ||| 量的緩和をやってしまった日・米・英がこれから直面する局面とは?

    ,

  • ||| バランスシート不況とは何か?みんなが一斉に借金返済に走るとどうなるか!?

    ,

  •  

    『金融政策』の関連記事

  • ||| ポンド安でEU離脱した英国の一人勝ちとなる可能性?

    ,

  • ||| 行きすぎな円安は悪い論と近隣窮乏化政策(Beggar thy neighbor)

    ,

  • ||| 最近目にする空売り系記事は米株価下落相場のポジショントーク!?

    ,

  • ||| 換金を急ぐ売り手と突然いなくなる買い手:バブルはある日突然崩壊する

    ,

  • ||| 金利を下げて、タダに近いコストにしても、日本では資金需要が起っていなかった!?

    ,

  • ||| 株・土地バブルの為に金融引き締めを行うと経済全体を崩壊させることになるのか?

    ,

  • ||| そこまでインフレでない日本、でも住宅ローン金利上昇は避けられない!?

    ,

  • ||| 半導体バブルはピークアウトするも、なぜ新車納車を1年以上待つ事態が起こっているのか?

    ,

  • ||| 四半世紀続いた米国スーパーバブル崩壊がはじまっている?

    ,

  • ||| 日本の財政は破綻する可能性はあるのか!?低い給与水準がインフレを防いでいる!?

    ,

  • ||| 日本でスタグフレーション!? 円安、国内物価上昇も所得はあがらないという悪循環がすぐそこまで迫っている!?

    ,

  • ||| 開発と製造の分離ができない自動車メーカーは凋落していく?

    ,

  • ||| 日本でも量的緩和をしているはずなのに日本の消費者物価指数が低いのはなぜ?

    ,

  • ||| そろそろ限界?世界的な金融緩和

    ,

  • ||| 量的緩和をやってしまった日・米・英がこれから直面する局面とは?

    ,

  • ||| バランスシート不況とは何か?みんなが一斉に借金返済に走るとどうなるか!?

    ,

  • ||| FRB量的緩和縮小根拠から推測する来年の景況

    ,

  • ||| 米失業率改善は人々が求職断念の現れであり、株高はリストラの進行を意味する:ノーベル経済学賞ファーマ教授

    ,

  • ||| 世界的なディスインフレ:先進国の賃金水準、新興国にあわせ低下し続ける!?

    ,

  • ||| 成熟国では健全な経済成長はもはやありえない!? 世界が日本流の長期停滞に入る恐れも?

    ,

  • ||| 来年2014年:QEなどの実験は失敗、成熟国のインフレ(成長)は難しいと実感する年になる!?

    ,

  • ||| イエレン氏:銀行は銀行業務をやるべき、投機的な事をすべきではない

    ,

  • ||| イエレン氏:負の遺産の精算と米経済血流を末端まで流す政策を約束

    ,

  • ||| 量的緩和には配管整備が必要。スティグリッツ教授マクロ施策だけではなんの対策にもならない

    ,

  • ||| すでに織り込み済みだった!?FRB出口の延期:影響についてまとめてみた

    ,

  • ||| QE3縮小延期から考えてみる庶民のマイナスシナリオ

    ,

  • ||| 円安期待が裏切られる日

  • ||| 米の量的緩和縮小は日本株にはプラスだが、11月22日までは5月23日の高値を超せない

  • ||| 量的緩和FMOC出口戦略を示唆  3段階で解除 市場混乱避ける

  • ||| 日本人全体が「はめられた」5・23ショック

    ,

  • その他の関連記事

     

    おすすめ記事

    記事カテゴリー

    タグ

     

     

     

     

     

    ブログランキング・にほんブログ村へ
    にほんブログ村


    人気ブログランキングへ

    過去の記事