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通貨政策視点からみた英国・米国・日本

2014年09月21日 ネズミ1号:略称「T」
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現代ビジネス:「日本経済は、消費税10%で完全に終わる」と題したノーベル経済学者クルーグマンの単独インタビューと題する電子版記事が現代ビジネスから出ていました。内容としては、株価も上昇し、景気も回復基調に入ろうという時に、増税という施策は、愚作中の愚作。過去日本では、同じような失敗を繰り返すことで、失われた20年を経た。といった内容です。

メディアの論調としては、増税は、離陸しようとしている飛行機の加速スピードを下げて、フラップを上げるようなもので、そのようなことをしたら飛行機(経済)は失速し、墜落してしまうといった論調が多いように見えすが、今日は、ちょっと視点を変えて、通貨政策という観点からこの件を見て妄想してみました。


 

 

通貨が下落して喜ぶ論調は正しいのか?
通貨は強いことが望ましい

歴史を遡ると、1970年代高度成長期の日本は、1ドル=350円という時代がありました。当時日本はドル建てで米国債券を大量に保有していたとのことですが、プラザ合意以降1ドル=350円という時代は終焉しました。当時のマスコミは、米国がドルの価値を下げることで、借金を帳消しにしたという論調が強かったようですが、別の見方をすると冷戦当時、極東の防波堤として共産圏に取り込まれないよう強い経済を体現することで、資本主義の防波堤にしようという政策合意が日本と米国の間で働いていたという想像をしてみることにします。

我々の世代は、日本は加工貿易立国、香港やシンガポールは、中継貿易立国なるモデルだと学校で教わりましたが、前者の加工貿易立国という前提は、安い労働力と安い為替があってこそ体現できるビジネスモデルだとも言えます。国際貿易という論点からは、比較優位論というのがありますが、ちょうど当てはまる感じですね。ただ、安価な労働力や安い為替というのは、それ以前の農業労働者や家内制手工業の時代の労働対価が安かったというだけで、工業化が進み、本来の労働に見合わないサラリー(見かけの収入)を得ることになると段々バランスが取れなくなるようです。こいう事象をルイス転換点というのだそうですが、次の段階に移行するという分岐点のようです。

いわば、植民地的な立ち位置から、同盟関係にふさわしい国家として強い通貨政策がとられたということもできるかもしれません。

通過が強いとうことは、外国からの物資や資源が安く手に入るということ。労働集約型から、高付加価値な材やサービスを販売し、その原材料や外国の生産物を安く購入することができるということはメリットがあると言えるのではないでしょうか?前提としては、産業構造(ビジネスモデル)が次の段階へシフトすることが前提となります。

当時の中曽根内閣は貿易摩擦、内需拡大という名の元、金利を下げ、通貨の価値をさらに上げてというように、内需(輸出から、輸入型)へと切り替えようとする過程でバブル経済が膨らみました。現在の中国もちょうど30年ほど前の日本に似ているかもしれません。

強い通貨とはその国が発行する銀行券に信用があるということで、銀行券を刷りさえすれば、なんでも買うことができる状態のことだとも言えそうです。 信用が何に裏付けされているのかという点がポイントとなると言えますが、例えば、世界を支配する強い軍隊があって逆らえない!とかよくわからないけれど も、あの国の秘密金庫の中には大量の金額眠っている!とかあの国の国家財政は手堅いとか、そういう心理的な演出要素が現代の世界では非常に重要な要素を占 めていると言えるかもしれません。

何れの時代においては、強い通貨を持ちその通貨によって自国の外から価値あるものを安価に交換できるモノを持っている国家の方が断然有利なことは理解できると思います。強い通貨とは、他国が汗水流して作った成果物を安い価値で仕入れることができるということなのです。

しかし、21世紀に入ってこの「汗水流して」という部分を機械やロボットが担うようになってきている事により、若干の構造シフトが起こっているような事が言えるかもしれません。

先進国:高効率、資源を消費しない、肉体労働のいらない世界へ!?

経済という観点から離れ、科学技術のエコシステムという観点で歴史を勝手に解釈してみると。。

  1. 狩猟型
  2. 自給自足型農業経済
    (ある程度自然をコントロール)
  3. 物々交換をするようになった商業化
    (比較優位)
  4. 家内制手工業や産業革命による工業化
    (資源を大量消費)
  5. エレクトロニクス化による情報化、生産工程の自動化
    (新たな産業カテゴリー誕生)
  6. 高効率低エネルギー、低資源消費型の次世代経済
    (肉体労働が不必要な世界の誕生:一般労働をロボットや人口知能(AI)などがこなす)

という流れで捉えてみます。

上の5番目のフェーズ(エレクトロニクス化による情報化、生産工程の自動化)に来ると消費材の価値は極端に下がり、ある年月が経つと、供給を需要が下回るという現象が何回も起きたと言われています。それは、機械や化石燃料を使って効率的に生産される工業製品が出回りすぎると供給を需要が上回るという現象なのだそうですが、これをリセットするために戦争が行われてきたという人たちもいるようです。

つまり、ここ数百年続いた経済のロジックから逸脱するような実態世界がここ数十年にかけての技術革新で実現してきたということが言えそうです。

では、ここで、イギリスや米国を通貨政策という観点から見てみます。イギリスはユーロ圏の中でも緊縮財政を真っ先に実施し、強いポンドとなっています。米国は、若干特殊で、軍事力に裏付けされたドルが基軸通貨であったため、過去数年の間ドル安政策をとったこともありましたが、基本は強いドルです。一部では米国が製造業回帰という流れが語られますが、これは、米国が旧来の安価な家電製品や旧来の技術での安価で低効率な自動車を生産するという訳ではなく、基本新しい技術革新部分を担う所や高級品を製造するという文脈なのだと思います。本当に価値あるものは、高級品として先進国で生産してもOKです。機械やロボットが生産し、どこでも設備さえあれば生産できるようなものは、通貨や国力の弱い国で生産され、通貨の強い国は安く仕入れる訳です。いってみれば、コモディティなものは肉体労働問わず先進的な国々では製造過程などにその分のマージン(価値)は見いだせないということなのでしょう。そういう意味で、このタイミングで日本が消費税を上げるというのは、実は愚作ではなく、強い円へという流を水面下で企てていることなのかもしれません。

米国は、来年量的緩和をおそらく事実上終わりにしようとしています。ヘリコプターマネーをばらまいても、バランスシート不況下では資金需要は出ないということが分かったということなのでしょうが、膨らんだマネーの収束に今後慎重な金融政策運用を迫られるという危機感の表れでもあるかもしれません。日本は見せかけ上、今後も金融緩和を続けるとブラフをいっていますが、おそらく無理でしょう。円安に転び、輸入物価が上がり、国内工業生産という点では通貨安による収支に期待できない状態、そもそもすでに工業国では食べていけない構造になっているにも関わらず弱い通貨政策をとることは愚作だと言えるかもしれません。

日本の官僚がどうなのかは実際はよくわかりませんが、私がお会いした旧通産省、総務省の方々ははやり頭の切れる方が多かったように思います。一般論でなく、深淵なる物事の本質を理解している人はいるように思えましたが、このように、逆説的な観点でいろいろ想像してみるのもたまには良いかもしれません。



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