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日本の経常収支「赤」字のトリック。日本経済は本当にヤバいのか!?

2014年02月18日 ネズミ1号:略称「T」
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現代ビジネス:アベノミクスで円安が進んでも、エネルギー輸出費の増大(約3兆円)貿易収支の赤字、その他収支を合算した経常収支が赤字ということでさまざまな論調の記事が出ているようです。中には、貿易収支のみを挙げて、ここ数年の貿易赤字累積??兆円といった内容の記事も見受けられますが、今日は冒頭で参照する記事の内容と「」で紹介した内容をもとに素人検証してみました。論点としては1.原発停止にともなうエネルギー輸入原料増、2.円安による輸入物資のコスト高、3.製造拠点の海外移転の進行の3つがあげられるかと思われますが、全体感としては、冒頭で紹介した記事にあるとおり経常赤字全体では、2012年度にくらべ2013年度は、0.1兆円ほど改善しているようです。


 

 

製造拠点が海外へ移転することで富が流出するというのは間違い

20年あまりの円高に苦しんできた企業が海外へ製造拠点などを移転する行為は、企業の経常利益を最大化するために行っている投資だといえます。当然、コストの安いところで、製造し、高く売れるとこで売るといった比較優位論にたった展開もあるでしょうし、新興国市場のお財布の中身に合わせて現地でリーズナブルに生産し、規模の論理で収益を上げ企業を成長させるという観点もあるかもしれません。

貿易収支でみると、赤字であっても、企業の財務諸表上は、営業利益が上がり、そこに勤める社員の所得も維持または上がっている訳です。これはいってみれば20年にも及ぶ通貨レートに適応すべくビジネスモデルの構造自体が変わったのだということが言えそうです。

実際の日本の経常収支の中身は?

まずは貿易収支の内訳から

2012年度2013年度増減
輸出額 5.2兆円 5.5兆円 +0.3兆円
輸入額 5.6兆円 6.3兆円 +0.7兆円

輸出総量は増えておらず、どちらかというと円安差益による+0.3兆円、逆に円安による輸入額増、エネルギー輸入量増で0.7兆円増となっています。

冒頭の記事によると2012年度と2013年度の経常収支に中身は下記の通りだそうです。

2012年度2013年度増減
貿易収支 ー0.4兆円 ー0.7兆円 ー0.4兆円
貿易サービス収支 ー0.7兆円 ー1.0兆円 ー0.3兆円
所得収支  1.2兆円  1.4兆円 +0.2兆円
経常移転収支 ー0.1兆円 ー0.1兆円
経常収支 ー0.4兆円 ー0.3兆円 +0.1兆円

記事によると貿易収支は、確かに減っていますが、所得収支が伸びて全般的な形状収支は0.1兆円改善されているそうです。これは、ここ20数年の円高傾向に対応して輸出企業の海外移転が進み円安でも輸出は増えないという流れができているといういうことだと言えそうです。しかし、そもそも、企業が製造拠点を海外に移すというのは、利益を出すための行為であり、結果として収益の改善が図られ、所得収支が改善するのはもっともな事だと思います。記事では、貿易収支だけをみて、「ヤバい」という論調は胡散臭いといいうのは納得です。

細かく内容を見てゆきます。貿易サービス収支とは、サービス取引の収支。経常移転収支とは、政府開発援助(ODA)などの現物援助だそうです。
こうしてみると2013年の貿易収支は、円安の影響で0.4兆円増えているようですが、輸出送料は増えていないそうです。これは単純に円安差益分と言えそうです。一方で国家間での経済取引を示す貿易サービス収支は、3000億円プラスになっています。
財務省のホームページの説明を見ると

サービス収支 :サービス取引の収支を示す。
(サービス取引の主な項目)
  輸送:国際貨物、旅客運賃の受取・支払
  旅行:訪日外国人旅行者・日本人海外旅行者の宿泊費、飲食費等の受取・支払
  金融:証券売買等に係る手数料等の受取・支払
  特許等使用料:特許権、著作権等の使用料の受取・支払

となっています。内訳にもよりますが見方によっては、対外投資が3000億円近く増えたという事だと言えそうです。

記事の中でISバランス論が紹介されていますが、これは「経常収支=貯蓄投資残高」というバランスシートの考え方のようです。

国民所得 = 消費 + 投資 + 経常収支
経常収支 = ( 国民所得 - 消費 ) - 投資
             ||
           「貯 蓄」
経常収支 = 貯蓄 - 投資

という構図ということですから、経常収支が赤であっても、投資(将来回収するもの)に回っていることなるので、赤字といって騒ぎ立てる意味はないとの事です。
ちょうど、個人ですと貯蓄性向が高くなり、企業がバランスシート上では、借金性向が増えるというバランスに似ている感じでしょうか?企業は、銀行に預けられた個人の貯蓄を有しとして借りて、設備投資しますが、この設備は勘定科目上は資産計上されていますし、さらに利潤を生む資産として利子を支払う訳です。

経常収支「赤」を騒ぐのは原発再稼働、消費税増税論の後押しのためか?

2・3月期は決算期なので、経常収支の話題が広まりやすいですが、こうした言及を高級官僚の方が言及したり、メディアの論調がそれを後押しするのはこのような意図が裏で働いているという考え方も一理あると見ても面白そうです。

すでに構造改革が進んでいる日本。

ここ20年の環境に適用すべく、日本の産業構造は、着実にその構造を変化させてきたと言えそうです。
一方で、海外に拠点を移設するということは、ファブレス工場へ委託するとか、台湾のTSMCのよう半導体企業に委託したりするケースもあるでしょうし、仮に企業資本で工場を移転しても少なくとも国内雇用においては、それなりの規模の雇用が失われたことは間違いないでしょう。
正確な統計データを見ていませんのであくまでも想像ですが、一つには、2007年ごろから到来した団塊ジュニアの定年などにより吸収されたでしょうし、またこれにともない技術流出も進んだとも想像しています。現在、日本の労働人口は10年前に比べれば確実に減っているとは思いますが、産業構造としてIT産業などの発達やデジタル分野などの企業など数千億から1兆円規模のマーケットが国内に新たに作られてきたといえますので、あらたな働き手はこうした産業がある程度吸収したかもしれません。
このようにレガシーな重商型企業群などは企業運営を効率化することで、成熟国日本のサラリーマンの高水準な所得を維持するために裾のを切り捨てながら潤沢な内部留保として企業はキャッシュを蓄えて来たという構図が想像できまし、そうした中、国内内需については、ITなどに代表される新たな産業などである一定規模の労働者を吸収したということかもしれません。日本でGoogleのようなサービスが生まれないのも、そもそも内向きなマーケットでIT産業が雇用の受け皿を担っているからともいえるかもしれません。その他は契約やパートといった具合でしょう。

今後中長期視点での日本のリスクは?

私の年代では、「日本のビジネスモデルは加工貿易国モデルだ」と学校で習いました。原材料を安く仕入れ、それを加工して付加価値を付けて売るというモデルです。
長期視点に立って考えると、成熟国である我が国の賃金水準を維持するための基礎研究投資、または製造ラインなどにおけるマイスター的な技術力は今後少なからず失われてゆくことになると言えそうです。
よく国力というと、経済と軍事力、そして現在では技術革新力と言われていますが、中長期的なリスクという意味におていは資源のない島国という点から高度な基礎技術力と技術革新力が失われる事だと考えてみました。

某アイルランドやケイマン諸島などのように1億人以上の人口を抱える巨大な母船が安易に金融業うんぬんというのも無理があるとも言えます。また、知的財産権などを基とした権利ビジネスなども考えられそうですが、これでは、本当にごく一部の天才か、法務を受け持つ弁護士先生などといった一部のプロフェッショナルな母体が超高所得を得る構造体になりそうです。

金融モデルが破綻した人口2.5億人規模の米国はモノづくり回帰の方向へ舵を切ろうとしているようにも見受けられますが、これは、国民所得の底上げ=失業率指数を提言させるための政策なのだと思います。FRBのバーナンキ議長も、出口戦略において、実体経済における失業率をターゲットして設定していることからも推測できますね。また、こうした施策ができるのもスタンフォードやMITといった大学などでの基礎研究や優秀な学生を世界中から青田買いしているというベーシックな部分がるからこそ取れる策なのだ思われますが、国民の購買力を挙げることが出来なければ、国力は低下する(経済が小さくなる)というのは何処の国でも同じなのでしょうね。
日本人一般の学力は世界でもトップレベルとの番組を最近見たことがありますが、質の高い労働集約型のビジネスモデルを担保するような一般的な国民の学力というよりは、これからは、裾の広い産業を作り出せる数多くの天才を排出するような教育の仕組みが構築できるか否かが、日本が課題として抱えるリスクと言えるかもしれません。



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