東洋経済でたまたま目にした記事ですがタイトルが衝撃的でしたのでちょっと詳しくみてみました。記事の件では、麻生氏財務省のワシントンでのスピーチが紹介されています。「私と安倍総理を楽天家の2人組と呼んでください。。。」お二人は日本の潜在的な力を信じていると述べたそうですが、日銀によるスーパー緩和が行われた今、経済の成長戦略を政府はきちんと描けているのでしょうか?
X-dayプロジェクト報告書はこちらからpdfでご覧いただけます。
平成23年6月1日 自民党 政務調査会 財務金融部会よりだされたもののようですが、8ページ程度薄い内容です。これって怪文書とも受け取れる書式ではありますが、内容は以外とまともなことが書かれています。
国債大量発行が続く中、財政が厳しい状況にある中自民党は財政健全化は必須、かつ経済成長を確保するための施策を主張してきたそうです。それからこれはこれは万が一やばいことがおきれば責任転換という流れかもしれませんが、民主党の無駄遣い削減や政策見直しによる財源確保公約がまもれなかったため財政がますます悪化し国債がボラクしたら民主党の政策に起因する人災だと述べられています。
ここでいうリスクとは、「国債が大暴落する」、「金利が上がる」、「物価が本当に上がりインフレになる」ということだそうです。
まず、一番初めの国債が大暴落(=国債金利が急上昇する)リスクはどうのようにして起こるのか。
現在の国債発行残高は1000兆円を超えているそうですが日本の個人金融資産が1400兆と言われるいます。日本の年間予算の半分以上が国債発行で賄われている今、遠くない将来、膨張する国の債務を国内貯蓄で賄えなくなり、海外からの資金調達に頼らざるを得なくなるそうです。そうなると、海外の投資家に、我が国国債に投資してもらうには、拡大する財政リスクに見合ったリターンが必要となり、国債金利が上昇する。まさにヨーロッパで起こったギリシャやイタリアのソブリン危機みたいなことが日本でも起こるというというシナリオです。
国債が急落した(=国債金利が急上昇した)場合以下の時系列に以下4つの分野でどういった影響がでるか整理されています。自民党の文章ですとかなりファジーな言い回しで書かれていましたので、個人的な見解も踏まえ極力わかりやすく紐解いてみます。
金融機関は600兆円に及び国債を保有しているそうです。金融機関ごとに資産/負債の満期構成が異なるので一概には言えないとしていますが、現在のお金が回っている流れが、
日銀がゼロ金利でお札をする>金融機関は低金利なお金を工面できる>政府が安い金利で国債を発行する>投資先がないので、金融機関は国債を買う。
とすると、国債金利が急上昇した場合
政府は高い金利で国債を発行しなければならなくなる>日銀はゼロ金利でお札を擦り続ける>金融機関低金利なお金を工面できる>金利が急上昇した日本国国債を新たに持つべきか迷いはじめる>手持ちの600兆円の国債がデフォルトしたらまずということで召喚期限が到来するまで国債を買うのをやめようと考えだす。それどころか、国債を資産としてB/S上で勘定していたが、その評価が暴落するとBIS規制(自己資本比率8%)にひっかるような金融機関も出てくる。
そしてそういった金融機関は預金調達や資金調達がしにくくなる=>金融システムに影響が出る。
といった流れが起きるかもしれないと解釈できます。
上記の流れで金融システムに影響がでるということは、金融機関の貸出活動などが萎縮するということになるので、これに加えて社債市場も機能しなくなり資金調達がしにくくなるそうです。また逆に金利が上昇するので、借金してまで投資するのは辞めようという流れになると予想されています。また過大な債務を抱える企業の経営基盤が揺るぎ大手倒産が頻発する事態にもなりかねないと。
個人分野については、市中金利の上昇は、年金受給者にとってはメリットとなる、また、住宅ローンの借入金等は金利上昇により変動金利があがりローン世帯に影響がでるだろう、と述べられています。
これが腑に落ちないのですが、金利上昇と物価下落状態が共存する環境になると言っているのでしょうか?
物価の価値がどんどん下がっていくことをデフレと言いますが、同じ1万円でも買えるもが増えると言い換えられます。これは年金受給者にとっては、もらっている年金の価値が増えるのでメリットが出るとこは分かるのですが、
一般的に物価と金利は、物価が上昇すると金利が上昇し、物価が低下すると金利も下がると正比例の関係にあると言われています。金利が上昇して、物価が下がるということはどういうことでしょうか?
インフレ(物価上昇かつ金利上昇)、デフレ(物価下落、金利下落)、スタグフレーション(景気停滞、物不足によるインフレ)3種が挙げられますが、金利があがって物価が下がる(不況になる)と解釈すると新しいタイプのスタグフレーションになると言っているのかもしれません。この金利上昇というのは、お金の価値は上がる(物価は下がる)が金利が上がるという異次元の現象なのかもしれません。池田信夫氏はこれを「黒田スタグフレーション」といっているようですが、なにやら良くわからない領域に突入しているようです。
バフェット氏などは「これからは、お金の価値が下がるので現物に投資せよ」と言っていますが、これもこうした歪な環境が到来するのを予見して、現物モノで一稼ぎしようという誘導する演出なのかもしれませんね。
財政は大変なことになるそうです。日本では現在、新規税源債及び借り換え債の発行額が年間150兆円にもなるそうですが、1%の金利上昇は、1年え1兆円、2年で2.5兆円、3年で4.2兆円の利払い費増加となるそうです。なんだ4年で4.2兆円?と思われるかもしれませんが、ギリシャの例を思い出してください。8%とかになると、33.2兆円ですよ。更に悪いことに、社会保障費などの伸びが毎年1兆円程度増えるそうです。4年で+5兆円です。
こうした状況に対して、歳出の抑制、歳入の確保、ないしは両方を行うしかないといっていますが、これはもうお手上げってことですね。
また、さりげなく以下のようなことも記載されています。
「なお、国債市場は、株式市場、為替市場他の金融市場とも密接に関連しており、そうした影響も十分留意する必要がある。市場が大きく変動する局面では、投機筋の動きが活発化することが予想され、そうした価格変動を増幅する動きも念頭に置かなければならない。」
これは個人的解釈としては、上記のような要素に留意するとこうした影響は投機筋の動きに煽られて、増幅されるのでは?と解釈します。
将来についてあまり悲観的になる必要はないとは思いますが、この報告書を読むと、アベノミクスという政策は、将来払わなければならない必要コストと引き換えに、とんでもない賭けに出ているのかもしれませんね。
冒頭の「私と安倍総理を楽天家の2人組と呼んでください。。。」が妙に気になるのは私だけでしょうか?
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